
最近では就職活動にあたって多くの新卒学生が平均1.2社のインターンシップを体験する(注)。筑波大学の数理物質科学研究科化学専攻では、即戦力となる専門性をもった人材を社会に送り出すことを目指して、独自のプログラムを開発している。
企業研究者を体験する数週間
約7割の学生が卒業後は企業の研究職に就くという筑波大学数理物質科学研究科化学専攻。中でも、ゲノムから分析化学まで、多様な専門分野の人材が必要とされる製薬企業は多くの学生が志望する就職先だ。同専攻では、平成17年度から万有製薬と連携して、企業の研究員の下に学生を派遣している。志望者は製薬企業の研究者を外部講師に迎えた4コースの創薬に関する授業を履修した後、希望する受け入れ部署で数週間業務を体験する。開始から4年目を迎え、プログラムの内容も充実してきた。
憧れの製薬企業研究を体験して
「ずっと創薬に携わることを目指して勉強をしてきた」という大好孝幸さん(博士後期課程2年)は2年前にこのプログラムに参加した。大学ではHIVの活性を阻害する物質について有機合成を行っているが、研究職に求められる下地を広げるために、あえて異なる分野に飛び込んだ。それが大量に生産される薬の品質管理を行う分離・分析コースだった。関連部署の業務以外の様々な分野の業務にも関わることを許され、創薬に携わるという夢の一歩を踏み出す貴重な経験となった。「企業も大学も研究に対する情熱は同じ。効率化を図るために計画段階で重点を置く課題を明確にする、企業ならではの姿勢などが、大学での研究においても参考になった」。「化学の基礎をしっかり勉強した上で、もっと生物の知識を身につけたいと思った」。大好さんは自身の変化をこう振り返る。現在は、引き続き薬に携わる夢を目指して、博士後期課程に進学、日々研究に励む日々だ。彼のケースのように、在学中から企業研究者を意識する機会となるこの取り組みは学生にとって魅力的だ。
インターンシップの課題と展望
「大学では学べない幅広い創薬についての知識、企業倫理への意識をつけた上で、学生を社会に送り出すことが狙いです」。本プログラムの責任者、木越英夫教授は力を込めて話す。産学連携で人材を育成する動きは高まりつつあるが、大学、企業側共に課題も多い。学内では、平日に研究室以外の研究に携わることに対して理解を得られる研究室ばかりではなく、最先端の研究成果を競っているだけに機密保持などの問題が壁となり、受入れ企業もまだ少ない。
「将来的には創薬化学に限らず他の分野でもこのプログラムを展開したい」と言う木越さん。そのためにはより多くの研究室や企業に協力を仰ぐことが必要だ。多くの学生が活き活きとした研究キャリアを歩めるよう、同専攻の挑戦は今後も続いていく。
(注)厚生労働省「インターンシップ推進のための調査研究委員会報告書」より

