今、沖縄県では海を臨む丘の上に世界最高水準の研究と教育を行う大学院大学の設立が進んでいる。ここでゼブラフィッシュの研究を行う政井さんは「将来一緒に研究する学生達には、世界を舞台に活躍してほしい」。との思いを胸に、今年度中の運用開始に向けて研究室の設計を進めている。
留学で身につけた研究の軸
「大学時代の恩師の講義が遺伝学に興味を持つきっかけでした」。東京大学で物理学を専攻していた政井さんは大学院から遺伝学の世界に飛び込んだ。このときの恩師が当時物理学科で教鞭をとっていた堀田凱樹教授(現、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構長)だ。突然変異によって遺伝子を壊し、現れた生命現象の原因遺伝子を探す。理論的でいて、宝探しのように新しい発見もある遺伝学に魅力を感じて、ショウジョウバエをモデルとした視細胞の研究に没頭した。
「博士課程を修了する頃、研究テーマを変えるチャンスを得て、すごく悩みました」。1994年『Science』にゼブラフィッシュの遺伝子地図が発表された。「それを見た瞬間、ゼブラフィッシュだと思いましたね」。原因遺伝子の解明に長い年月を費やしていた遺伝学だが、この論文をきっかけに時間が短縮されると確信した。早速、ロンドン大学で研究を行うステファン・ウィルソン博士の研究室の扉を叩いた。当時同博士は弱冠31歳。有名な研究室に留学しないと箔がつかないなど周りの反対もあったが、「生命現象を観る力をつけたい」と自らの意志で組織学を専門とするウィルソン博士の下へ留学した。3年間の留学で養った生物学の観察眼を軸に、理化学研究所では独立主幹研究ユニットリーダー第1期生として5年間、その後沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)に移り、ゼブラフィッシュをモデルに「複雑な仕組みを持つ脳の発生機構」というテーマに取り組む。


