
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、国際レベルの研究と大学院教育を実施することを目的に、1990年10月に創設された。知識科学、情報科学、マテリアル科学の3つの分野で最先端を走るこの大学で、「知識」という新しい視点から既存の学問領域にとらわれることなく、イノベーションを巻き起こすための取り組みが行われている。
多様な学生に対応した教育プラン
社会や産業の変化に伴い、大学院修了者に求められる資質・能力は大きく変化してきた。実践力を備えた技術者として活躍したい人、研究の世界で活躍するために博士号取得を目指す人、また学部時代とは別の分野で学びたい人など、学生側の意識も多様化している。これらの変化に対応するため、2008年度入学生より、新教育プランがスタートした。
修士課程・博士課程といった従来のプログラムに加え、より早期から博士号取得を目指す5年一貫コースや、飛び入学者を対象とした4年間のコース。また異分野からの進学者を対象とし、基礎からじっくり学ぶことができるMα と呼ばれる3年間のプログラムなど、学生の状況と将来の目的に合わせて5つのプログラムが用意されている。また、技術経営(MOT)コースなど、社会人向けプログラムにも対応している。
知のコーディネータを育成
JAISTがもつ特徴的な研究科の1つが、世界で初めて「知識」をテーマとした研究・教育機関、知識科学研究科だ。21世紀は、「知識」が、生産、商品流通などの経済活動をはじめ、様々な社会的活動の中心になると考えられている。実際に、最近のインターネットの普及やバーチャルコーポレーションの登場、知的所有権への関心の高まりなど、知識の生産やイノベーションに、高い価値が与えられている。「知」を融合することで新しい価値を見いだす「知のコーディネータ」の育成が求められているのだ。その1つの手段として、J AISTではサイエンスカフェが利用されている。
サイエンスカフェの可能性
サイエンスカフェは、1998年にイギリスのリーズで始まったカフェシアンティフィーク(CaféScientifique)が起源と言われている。科学の専門家を招き、カジュアルな雰囲気の中で科学について語り合うものだ。J AIST でも、2005年10月より「サイエンスカフェ石川」をスタートさせ、有機ELをはじめとした最先端の研究内容の紹介や、地域の風土と経済について紹介してきた。大学での日常とともに、専門家の知見や大学の研究成果を発表し、地域の声を研究にフィードバックすることで、多くの市民にその活動を理解し、サポートしてもらうことが可能となる。
サイエンスカフェの企画、講師、ファシリテータ等を経験することで、学生たちは大きな成長を遂げる。異分野の人にわかりやすく伝える経験は、想像以上に学びが多い。深い知識を持ち、さらに相手を正しく理解することができて初めて本当の面白さを伝えることができるからだ。「JAIST SCIENCE CAFE実行委員会」では、国内の先駆的な活動を視察し、ファシリテータ勉強会などを通して、知のコーディネータ育成の場を作り上げてきた。専門知識とコミュニケーション能力を兼ね備え、「知」の融合を推進することができる次世代の研究者たちの、今後の活躍が期待されている。

