Category: 研究:企業 | Update: 05/22 | Posted by: ikkan

ガン治療への使命感が推進力

オンコセラピー・サイエンス株式会社

事業へと駆り立てたもの

多くの女性研究員が活躍

 2003年、設立から3年目に東証マザーズへの上場を果たしたオンコセラピー・サイエンス株式会社。これを支えた同社の強みはとてもシンプルなものだ。それは、「研究成果を社会で役立てたい」という強い想い。朝から晩まで実験に明け暮れる、日々の研究生活では見失いがちになるが、研究者の多くが抱いている想いだろう。
 「ガン研究のゴールは、ガン遺伝子やガン細胞を理解することではなく、それを通してガンを予防し、早期に発見し、完全に治癒させることである」。 臨床医を経てガン研究者として活躍する東京大学医科学研究所(医科研)ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔教授(現・同社取締役)のこうした考え・研究姿勢に共感した人々が集まり、同社は設立された。新たな知見を発表するたびに、中村教授の元に多くの問い合わせが患者さんやその家族から寄せられる。「研究成果をより早く患者さんへ還元するために事業化は必然だった」。自らも中村氏の考えに賛同し、起業に参画した取締役副社長の中鶴氏は振り返る。焦燥感さえ伴うガン治療への使命感が事業のスピード化を図る。

ガン治療薬の開発戦略

 同社の特徴は、ガン治療薬の開発に向けて一貫して自社で取り組むことが可能な組織であることだ。2006年現在、上場している15社のバイオベンチャーのほとんどが研究支援技術系か前臨床からの創薬系といったように、領域を限定して特徴づけしている中で同社は王道を歩む。自社で創薬のターゲットを探るための基礎的な研究支援技術から、実際に創薬シーズを同定・最適化していく創薬基盤技術の両方を併せ持っていることは、今後大きな付加価値を生み出す可能性を秘めている。
 現在は、医科研と密接な連携をとりながらも、役割分担をすることで事業を進めている。医科研においては、同社独自のcDNAマイクロアレイを利用した網羅的な遺伝子発現解析技術を用いて、ヒトの全遺伝子(約23,000種)についてガン患者の臨床サンプルを解析し、ガン特異的に発現する遺伝子を探索する。得られた標的遺伝子の機能解析をはじめ、創薬の臨床フェーズへ進展させるための研究を同社が担う。創薬の最終形態として抗体、低分子化合物、ペプチドワクチン、RNAiにターゲットを絞ってアプローチすることで、副作用の少ない分子標的治療薬の開発を見据えている。

若手研究者が育つ環境

 多くのバイオベンチャーが即戦力となる中途社員を求める中で、同社の研究人材の大半は修士課程を修了した後、新卒研究員として採用されている。それだけでなく、研究事業の柱である抗体、低分子化合物、RNAi、ペプチドワクチンの各研究グループをリードしているのはいずれも30代前半の若手研究者だ。彼らの下、全社員53名のうち、半数以上が研究に従事する。しかしながら、若さゆえの甘えや浮ついた雰囲気はそこにはない。毎月のように行われる中村教授とのディスカッションを通して患者さんや家族の想いを知ると同時に、これまでの経験の全てを賭して事業を行う同社経営陣と共有する時間が、実務経験のない新卒の学生を熱意ある研究者へと変えていく。
 「経験はないかもしれない。しかし、若い人材は柔軟に物事を吸収していく。一緒に仕事をしていく中で使命感を共有できれば、大いに活躍してくれる」。取締役副社長の中鶴氏は、若い力に期待する。 上場したとはいえ、まだまだ駆け出しのベンチャー企業。個々の業績がダイレクトに企業の成長に直結する。この緊張感も若手の成長速度を加速する。


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