抗酸化能と健康
老化の促進や疾病の原因として注目される「活性酸素」は、呼吸を通して酸素を絶えず取り入れ、エネルギーを作り出す過程で必然的に作られている。細菌の侵入に対する生体防御として働く一方で、過剰に産生されると活性酸素フリーラジカル(不対電子)は、DNAやタンパク質、脂質などを酸化し生体に障害を与える。もともと生体内には活性酸素を消去する酵素や抗酸化物質が多く存在するが、紫外線やストレス、乱れた食生活により本来備えている消去量を上回る活性酸素が作り出されてしまい、積極的に抗酸化物質を摂取することが必要となってくる。こうした背景により、抗酸化能を謳う多くの食品やサプリメントが登場しているが、物質の抗酸化能を測定する分析方法に標準手法や統一基準が存在していないのが現状だ。
ESRの可能性く
物質の抗酸化能を測定するために、これまでFRAP法(Ferric Reducing Ability of Plasma)やDPPH法(1,1-diphenyl -2-picrylhydrazyl assay)など様々な手法が開発されてきた。しかし、生体内では発生しない活性酸素種を用いた測定や限定された測定対象など、どれも課題が残されたままであった。そこで、藤井教授らは、試料の形状(液体、気体、固体)に影響されることなく、非破壊的に、そして選択的にフリーラジカルを測定できる唯一の手段である電子スピン共鳴法(ESR)を用いた抗酸化能評価手法の開発に乗り出した。「ESRは50年前から確立された手法であり、多くの研究者は、抗酸化能の測定法としてのESRの可能性に気づきながら、これまでコンパクトで迅速な測定が可能なESR装置の開発に着手してこなかったのです。今回の事業に参画することで、資金と機会を得て挑戦することを決めました」。
ESRの抱える課題は、測定法が簡単ではないことと、迅速な測定が行えないことにあった。初年度はサンプルの連続測定を可能にする機器の開発・改良を行うとともに、簡便な測定プロトコルの作成と生体内で産生される主要な活性酸素種であるヒドロキシラジカル(・OH)とスーパーオキシド(O2-)に対する抗酸化能を測定する試薬キットの製造にも着手した。
真の実用化に向けて
2年間の藤井教授らの実用化研究は折り返し地点を迎え、活性酸素に対する抗酸化能を測定するための技術的な目処は立った。「良いものができたからこそ、ESRによる評価法を利用してもらいたい。抗酸化能評価方法として世界中でどれだけ使ってもらえるかが勝負です」。そのために、食素材の抗酸化能の測定で実績を積み上げていくのはもちろんのこと、内科医や運動学者とともに抗酸化物質の体内動態の研究を行い、食と健康の関わりを明らかにしたいと考えている。ここに、北海道発の新たな世界基準が生まれようとしている。
研究テーマ
- 「実用化研究」(関係府省連携枠) / 抗酸化能を正確・簡易に測定するためのESR用計測技術の開発
抗酸化能を正確に評価できる電子スピン共鳴法(ESR)を用いた迅速・自動化計測システムの開発する。

