「一流の研究者になるために選んだ場所」
Category: 研究:大学・研究機関 | Update: 07/03 | Posted by: career「実は、体験入学の初日にもらったテーマを、僕は今も解き続けているんです」。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の博士一貫課程2年時修了後に遺伝研へやって来た森さん。7月の入試を終えた後、8月、急遽参加した体験入学で得た確信はますます強くなっている。「ここでの経験が、一端の研究者になる確率を高めてくれるはずだ」。
先端研究を志す
「教科書って誰が作ったの?教科書に書いていないことを僕は知りたい」。小学生のころに抱いた想いだ。誰も知らない最先端研究をしたいと考えていた高校生のときに、森さんは特別授業で「ゲノム研究」の存在を知った。ひとつひとつの遺伝子の解析から網羅的な解析へと生物学の研究が大きく進む状況にわくわくし、高校卒業後、アメリカの大学へ進学することを決めた。「最先端の研究とともに、研究に携わる上で必須となる英語力も同時に身につけたいと思った」。アメリカで最初に入学したサンタモニカカレッジでは、生物学に限定せず、幅広く科学を学んだ。そこで出会った教授から、森さんが今後どのようなアプローチでゲノム研究に携わるのかという方向性を決めるアドバイスをもらった。「もし本当にゲノムの勉強がしたいなら、基礎的な数学が絶対に必要になる。これからの生物学では数式を理解できる人材が求められる」。森さんは数学の重要性を確かめる意味も込めて、サンタモニカカレッジ2年の時にUCLA大学院の応用数学のクラスに1年間参加し、卒業後はUCLAに進学した。この頃から、森さんは自分の専門分野をバイオインフォマティクスに定めてゲノム研究に携わろうと考えていた。
アメリカから遺伝研に辿り着く
UCLAに通い始めた当時、アメリカでもまだ始まったばかりのバイオインフォマティクスの分野では、ひとつのテーマに対して生物学者、数学者、情報科学者等、様々な専門家が協力し、それぞれの分野からアプローチすることで急速な進歩を遂げていた。しかし、森さんはアメリカのスタイルではない研究へのアプローチを考える。「同じゲノムといっても、それぞれの専門家が見ているものは違うのではないか。生物学の実験や観察で得られるデータの大半が、数学では例外とされるようなデータだ。僕は、理論と実験を自分で組み合わせてアプローチできる研究者になりたい」。研究の速度は鈍るかもしれない。けれども、複数の専門分野を学んだ人間だからこそ生み出せる相互作用があるはずだ。「自分の描く研究者に近づくために、どこで研究をすればよいのか」。インターネットや、各国から集まった留学生やポスドクの話を参考に情報を集めたところ、遺伝研・小原研究室が候補となった。実験に基づいた大量のデータを有し、同時にコンピューターを使った情報処理も行っている。小原教授にEメールで連絡を取り、実験も理論も同時に研究できるだろうと受験を決めた。
体験入学で進路選択に自信を得る
無事合格したものの、森さんには迷いがあった。「UCLAに残る道もある。本当に遺伝研で良いのか」。森さんは、遺伝研のゲストハウスに滞在しながら、希望研究室で10日間の研究体験ができる体験入学の制度を利用して自分の選択を見極めようと考えた。体験入学初日、小原教授から与えられたテーマは、遺伝子の転写が始まるための目印となる「配列」とその「場所」を予測するプログラムを作り、検証することだ。「どういう配列かもわからない、長さもわからない。まず、存在するかしないかだけでも知りたいと思いました」。これまでに小原研究室で蓄積してきた膨大な量の遺伝子発現パターンを示したデータを前に、どういう切り口で解析すればプログラムを作れるのかと考え続けた10日間はあっという間に過ぎた。「この期間内に解くことは無理だ。けれども、これが解けるようになったら、自分の目指す理論と実験を組み合わせた研究者になれると思いました」。最終日を待たずに、遺伝研こそ自分が求めていた場所だと森さんは確信した。
「結果」を焦らないことで実力を養う
2004年10月、5年制博士一貫課程に入学し、森さんの研究が本格的に始まった。プログラムを作りに行き詰ると、実験に切り替える。その時も、頭のなかではプログラムのどこが間違っているのかを考える。逆に、実験に行き詰ったらプログラムを作成しながら頭を冷やす。実験を通してでしか浮かんでこないアイディアやインスピレーションがあり、プログラムと実験を切り替えて検証を繰り返す。自分の考えで、自分の研究をしている実感があると森さんはいう。遺伝研では学生に対して、「学位を取るため」「論文を出すため」の結果を求めない。学生が試行錯誤をしながら、自分で「研究とは何か」を掴み、自分の研究スタイルを作り上げていく過程を支援する。そこには、研究者養成機関としての自負がある。「遺伝研の先生は、自分の考えに基づいた挑戦はどんな失敗をしても見守ってくれる。有名な雑誌に論文が掲載されるよりも、『ここから新たな研究の流れが始まった』といわれるような研究をしたい」。森さんは、自分の力で思い切り挑戦する場所と機会を遺伝研に見出している。
- 氏名
- 森 明弘 さん
- プロフィール
- 国立遺伝学研究所 総合研究大学院大学遺伝学専攻 博士一貫課程4年





