「30歳で研究テーマを変える」。山岸教授は、植物の研究に没頭していた留学先のアメリカから帰国してから6 ヶ月間、図書館にこもって論文を読み漁り、悩み、大きな決断をした。現在、山岸教授が掲げる研究テーマである「生命の起源の探究」は、この時から始まった。
宇宙で仮説を検証したい
高度400㎞を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に、2008年3月、日本実験棟「きぼう」が建設された。山岸教授らのグループは2011年度から行われる第Ⅱ期実験計画に応募し、宇宙空間を漂う生物の採取を計画している。「たんぽぽ計画」と名付けられたこの実験は、超高性能のクッション機能を持つシリカエアロゲルの採取装置を「きぼう」の船外実験室に取り付けて行う予定だ。「生命」はどこで生まれたのだろう。生命の起源をめぐる研究では、宇宙で生まれた微生物が地球生命の祖先となったとする「パンスペルミア仮説」が注目を集める中、山岸教授は、生命が地球で生まれ、それが逆に宇宙へ飛び出して他の星へ行っている可能性もあると考える。たんぽぽの綿毛のように地球を飛び出した微生物が居るのかもしれない。自らの仮説を検証するチャンスを山岸教授は待っている。
面白いことの連鎖で研究が発展する
「たんぽぽ計画」は、ふとした疑問から始まった。10年前、宇宙船ミール内の微生物の存在を調べる研究を手伝っていた時、「宇宙船には人間が住んでいるのだから、微生物も居るに決まっている。でも、外はどうだろう」と山岸教授は考えた。インターネットで微粒子を捕える研究者を調べ、見つけたらすぐに連絡する。そして、会いに行く。「小さなアイディアを話すと『それ面白いね。こんなこともできるかもしれない、やってみよう』といろいろな人が言ってくれる」。生命科学の分野を超えて、宇宙科学や粒子線物理学などの専門家の協力を得て、山岸教授は生命の起源を探っていく。
運命の赤い糸のどれを選ぶのか決める
「僕の行動規範は、何をしようかと迷ったら、やりたいことをやりたい順にやる。それが、一番効率の良い方法だと思っている」。学部長になった今も学生の先陣を切って研究を楽しむ山岸教授は、学生には、やりたいことをたくさんストックしておいて、挑戦してほしいと願う。そのために、専門知識をつけることと同じくらい、調査する力、継続する
力、決断する力を学生時代に身につけることが必要だという。大学3年生や4年生になれば誰しも、将来進むべき道に悩む。進学か、それとも就職か。どの大学院、企業に進むべきか…。全てを見通せることなどない。だからこそ、「他人」ではなく、「自分」で決断するしかない。「後悔してもよい。自分でよく考えた結果なら、一生懸命打ち込むことができる。結婚相手と一緒。決めることが大事なんだよ。何本もある運命の赤い糸のうちから、これだって決めることだ」。決断した時がスタートだ。山岸教授自身も、これまでそうしてやってきた。スタートを切らなければ何も始まらない。

